心を開いて/ZARD

心を開いて/ZARD

作詞:坂井泉水 作曲:織田哲郎

 

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私はあなたが想ってる

様な人ではないかもしれない

でも不思議なんだけど

あなたの声を聞いてると

とても 優しい気持ちになるのよ

 

→あなたが想ってくれている私は、本当の私とは言えない

私は人付き合いが苦手だから、大好きなあなたにさえもまだ本当の自分を曝け出せていないの

けれどもあなたの声を聴いていると、きっとあなたに心を開ける日がくるはずだと優しい気持ちになるのよ

 

 

このままずっと 忘れたくない

現実(いま)が想い出に変わっても

言葉はないけど きっとあなたも 同じ気持ちでいるよね

 

→もしいつかあなたと離れてしまう日がきても、私は今あなたといる時間を決して忘れない

口下手な私たちはそんな照れくさいことは言い合えないけど、きっとあなたも私と同じ気持ちでいるよね

 

 

人と深くつきあうこと

私もそんなに 得意じゃなかった

でも あなたを見ていると

私と似ていて もどかしい

そういう所が たまらなく好きなの

 

→私が言えたものではないけれど、あなたは私以上に人付き合いが苦手みたい

あなたを見ていると、自分の不器用さを見ているようでもどかしくなるわ

それでも、なんだか似た者同士みたいなあなたのことが、私はたまらなく好きなのよ

 

 

ビルの隙間に二人座って

道行く人を ただ眺めていた

時間が過ぎるのが 悲しくて

あなたの肩に 寄りそった

 

→何もせずとも、何も言葉を交わさなくとも、あなたとならばずっと同じ時間を過ごすことができる

きっと私とあなたはこの先も一緒にいるのだろうと信じたいけれど、ときどき未来が怖くなってしまう

時間が止まればいいのにと願いながら、あなたの肩に寄り添った日もあったね

 

※1 (2:24-2:26)

 

My dream Your smile

忘れようとすればする程 好きになる

それが誤解や錯覚でも…

心を開いて

 

→あなたとずっと一緒にいたいと願ったあの日の私の夢を思いだしてしまう

あなたの笑顔を思いだしてしまう

あなたを忘れようとすればするほど、もっともっとあなたを好きになってしまう

私が心を開けていたならば、私たちは別れずにすんでいたはずなのに

そんな私の思いは誤解や錯覚なのかもしれないけれど、あの時あなたに心を開けばよかったと今でも思う

 

 

どんなときも あなたの胸に

迷わず 飛び込んでゆくわ

Your dream I believe

ときめいてる 心を開いて

 

→もしももう一度あなたに逢えるのならば、その時は迷わずあなたの胸に飛び込んでゆくわ

今でも私は、あなたのことを想っているから

今度こそはきっと、この心を開いて

 

 

 

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 「この世で最も好きな曲は何か」と問われれば、考えに考えた挙句、結局答えは見出せそうにない。

しかし、「この世で最も心落ち着く曲は何か」と問われれば、私は迷わず「ZARDの心を開いて」と答えるだろう。

この曲は、私が生涯大切にしていきたい音楽の一つであり、また宝物の一つでもある。

 

 ZARD坂井泉水)といえば「負けないで」であり、「前向き」や「応援」など、ZARDに対してどちらかと言えばポジティブな明るいイメージを持つ人は多いだろう。

しかし私のようなZARDファンから言わせれば、ZARDは「ポジティブ」や「明るい」などといった言葉は全くそぐわない、寧ろ対極に位置するアーティストなのである。

今ざっと思いつくかぎりでも、

・眠れない夜を抱いて ☆眠れない夜を抱いて☆ - YouTube

・不思議ね・・・ 不思議ね - YouTube

・少女の頃に戻ったみたいに 少女の頃に戻ったみたいに - YouTube

など、ZARDの曲は”過去”に想いを馳せる曲が多い。

世間から応援歌として認知されている「負けないで」も、その実は過去の失恋を元にした曲なのだ。

正確に調べたことはないものの、ZARDの曲を「未来」「現在」「過去」という時間軸で分類するならば、8割以上は「過去」に分類されるのではないだろうか。

それほどZARDには過去を想う曲が多く、「少年」「少女」「あの日」「あの時」といった言葉は、ZARDにおける頻出語なのである。

 

 そして、今回挙げたこの「心を開いて」もまた、過去に想いを馳せたZARDの珠玉の一曲なのである。

 

人とうまく付き合うことができない。なかなか人に本当の自分(素の自分)を晒すことができない。

ーそんな不器用な一人の女性が、恋をした。相手は自分と同じ、不器用で口下手な男性だ。

「この人になら心を開けるのではないか。この人にこそ心を開きたい。」そんな純粋で健気な思いは、受け入れられなかったときの恐怖に何度もかき消されてしまう。

そして、二人の恋はやがて終わってしまう。彼女は最後まで彼に心を開くことはできなかった。

私がもしあのとき心を開いていたなら・・と、彼女は何度も自分を悔いては、決して戻ることのない時間に想いを馳せる。

しかし、あれから時が経ち様々な経験を経た今、女性は思う。「今ならきっと、心を開けるはずだ。もしもう一度あの人に会えるのならば、今度こそはまっすぐにあの人の心に飛びこんでいくんだ。」と。

 

ーあくまで私個人の解釈ではあるものの、この曲に込められたストーリーや思いは上記のようなものではないかと思う。

これはZARDの他の曲を知ってるからこそ言えることであるが、作詞者でありボーカルもといZARDそのものでもある坂井泉水さんは、人付き合いが得意だとは言えない女性だったはずだ。

この心を開いての7年後に発表された

・明日を夢みて [PV] ZARD - 明日を夢見て(Ashita wo Yume mite) - YouTube

の歌詞には、「本当は誰にも心開けない」という一節があるが、それこそが坂井さんの本音であろう。

そんな坂井さんがおそらく実際に経験したであろう、自分の不器用さ故に失ってしまった恋。大切な人。その人を想って紡がれた一曲なのではないだろうか。

 

 

 ちなみに私がこの曲を解釈するのにはかなり長い時間を要したのだが、その原因は「忘れようとすればするほど好きになる」の一節にある。

出だしからこの一節までの歌詞は、想いを馳せる時間軸が「現在」にあるが、間奏後の歌詞は「忘れようとすればするほど好きになる」と、時間軸が「過去」にずれてしまうのだ。

「これから心を開いていきたい・・」と現在(いま)の想いを紡いでいたのに、突然「忘れられない」と過去の想いを紡ぎだす。

現在の想いと過去の想いで表現される”あなた”はそれぞれ別人なのだろうか?

だとしたら、この曲はどういう意味なのだろうか?

・・・結局この曲に込められた想いはどういったものなのだろうか。

ーどこか一つでも違和感があると、その曲を完全に自分の中に落とし込んだとは言えない。

この違和感が拭えない限り、私はこの「心を開いて」の本当の想いを知ることができないのだ。

 

そう考えながら、聴き続けること6年。

 

2016年10月。私がこの曲の想いを(私なりに)完全に理解したのは、2:24-2:26の2秒間の意味に気が付いたときだった。

音楽にあかるくないため我ながらあまりに以下の音表現が稚拙すぎるのだが、

 

※1の2:24-2:26。ギターがとまり、フワーッとした音が高音になり、一瞬の間があく。

この2秒間こそ、この曲を理解する鍵だったのだ。

 

この2秒間が表しているのは何か。それはまさに、「時間軸の変化」なのだろう。

つまりこの曲は、過去の想いと現在の想いを、”2秒間のフワーッ(一瞬の間)”を活かして並べることにより、別人などではないたった一人の忘れられない人への想いを紡いだ曲なのである。

 

 ZARDの曲の大半は、既に作られたメロディーに坂井さんが歌詞をつけることにより完成する。

この曲のメロディーを聴いた坂井さんは、今でも忘れられない切ない時間と大切な人を思いだしたのだろう。

そして、2:24-2:26の間を活かし、自分の過去にも現在にも生きる大切な人を想う自分の心を一曲の中に閉じ込め表現した。

 

「心を開いて」は、 ”本当は誰にも心開けない”一人の不器用な女性が、一人の男性のために心を開きたいと願った、そんな切ない想いのこもった一曲なのである。